■DVD 【FREAKS OF THE LEGEND】

正にFREAKS達の饗宴と呼ぶに相応しい
魅惑のROCK SHOW!!
懐かしくも新しいこの興奮を体感せよ!!
BUCK-TICK(Dr.) ヤガミ・トール

80年代初頭より活動を続 け、”PUNK””UNDERGROUND”&”DARK SCENE”を
牽引し多大なる影響を与えた、個性的かつ異端なバ ンドが20年近くの年月を超えて、
2009年1月、新宿のLIVE HOUSE 「MARZ」にて「FREAKS OF THE LEGEND」として再会した。
マダム・エドワルダ、モスキート・スパイラル、 オートモッド、ルーパスと音楽性は様々だがパンク・シーンは勿論の事、ビジュアル・シーン、 ゴシック・シーン、メタル等に与えた影響は計り知 れない“レジェンド”達の映像である。


【FREAKS OF THE LEGEND】

〜これは夢か幻か、眩き80年代の幻想なの か・・・。いや、ここにあるのは、紛れもなく2009 年という、暗くて長いトンネルのごとき21世紀の序 章に繰り広げられた現実の話だ。今作は、パンク、 ニューウェイヴの研ぎ澄まされた刃に犯されたすべ ての者たちに捧ぐ、<伝説の異形者たち>による狂 気乱舞の一夜の模様を収めた映像作品である〜

さぁ、いきなり冒頭から個人的な話をさせてもらう が、少し時間を遡った2007年の11月に、ヨーロッパは チェコのプラハにて開催された【DROP DEAD FESTIVAL vol. 5】という、ポスト・パンク/ゴシック・パンクに特 化したアメリカ発信のフェスティヴァルを観戦して きた。そこでは、SEX GANG CHILDRENやAUSGANG、RUBELLA BULLETに TWISTED NERVEといった、いわゆる80年代イギリスのパン ク/ポジティヴ・パンクの英雄たちをはじめ、LENE LOVICHやMONA MUR(ドイツ)といったニューウェイヴの歌 姫らが、世界各国から集結した数多くの新世代のパ ンク/ポスト・パンクのバンドらとともに5日間に 渡ってライヴを行い、初日からアフターパーティー も含め最初っから最後まで大盛り上がりを見せてい た。会場には、髪の毛を赤や紫、緑に染めて横をい さぎよく刈りさったバリバリのモヒカンの若いパン クスや、年配だが格好はビシリとキメたゴリゴリの 現役オールドスクール・ゴスまでがひしめき合って 世代を超えて入り混じり、音楽とその文化を思いっ きり楽しむ環境が出来上がっていたのだ。そこに は、パンク誕生当時〜創世記のままの「今ここで何 かが生まれている!」というエネルギーが満ち満ち ていて、「こんな環境が日本にも欲しいなぁ」と思 いながら、胸いっぱいの衝撃と衝動を抱えて帰国し たものである。

海外では、上記の【DROP DEAD FESTIVAL】のほかにも、ド イツの【WAVE GOTIK TREFFEN】などを代表とするゴシッ ク・フェスティヴァルや、かつての【HOLIDAYS IN THE SUN】のような大型パンク・フェスティヴァルが多数 存在し、新旧のバンドが一緒くたになって毎年盛ん にライヴ/フェスティヴァルを行っている。ここ最 近では、ポジティヴ・パンクの代名詞ともいえる伝 説のゴス・クラブ、【BATCAVE】の復活イベントも開 催され、中心バンドのSPECIMENとALIEN SEX FIENDが共演を 果し話題となっていた。ボクは別に80’s至上主義で も懐古主義でも何でもないが、日頃から世界各国の 70年代〜80年代パンク/ニューウェイヴを(後追いで) 聴き漁り、現行のバンドでも「その時代」のニオイ や、それに匹敵するエネルギーや衝動、衝撃をガン ガン放っているバンドや音楽が大好きなので、そう いった現代のバンドを見たり聴いたりするのと同じ く、やはり創世記を支えてきた名バンドもたくさん 見たいと思っている。それはこのの音楽が好きな 人間ならば当然のことと思う。

そんな矢先、耳に入ってきたのが、【FREAKS OF THE LEGEND vol.2】開催の話だった。首謀者は、97年の復活 以降、現在も日本のアンダーグラウンド・ロック・ シーンに於いて妖艶な漆黒の光を放ち続ける都内最 大のゴシック・イベント、【Tokyo Dark Castle】を毎月 開催し、東京のゴシック/ダーク・ロック・シーン の台風の目として、いまだ現役で活動を続けるAUTO- MODのフロントマン、GENET(ジュネ)。いわずと知れた80 年代初頭の日本のパンク/ニューウェイヴ創世記か ら活動をする生き字引であり、当時からひときわ異 才を放ち続ける彼の呼びかけで、モモヨ率いるLIZARD や、元THE STALINの遠藤ミチロウ率いるM.J.Qら、いわゆ る「生ける伝説」的なパンクのオリジネイターたち が集い、新宿ロフトにて【FREAKS OF THE LEGEND (vol.1)】 が催されたのが2006年10月20日。惜しくもボクはこの 機会を見逃してしまったのだが、そからおよそ2 年の月日を経た2008年8月2日、今度は新宿MARZにて、 その奇跡の一夜の第2章、【FREAKS OF THE LEGEND vol.2】が 開催されるという。ラインナップは、GENET率いるAUTO- MODを筆頭に、元ALLERGY〜De+LAX、PARALLEL PARADOXのCHU-YA(宙 也)率いるLOOPUS、THE EXECUTE〜GASTUNKのシンガーであった BAKI(バキ)率いるMOSQUITO SPIRAL、そして近年ではZEUS MACHINAやROMEO MIRRORとして活動していたZin-Francois Angelique (ジン・フランソワ・アンジェリック、以下Zin)の手 によって見事に復活を果したMadame Edwarda(featuring ZEUS MACHINA)という、これまた前回と並んで強力な布陣! その、まさに80年代初頭以降の日本のパンク、 ニューウェイヴ、ハードコア、そしてポジティヴ・ パンクの歴史を築き上げ、牽引してきた偉大なるバ ンドのフロントマンらがおよそ20数年近くの時を経 て一同に会す、今となっては文字通りの奇跡的な組 み合わせを耳にしたとき、ボクは一瞬耳を疑いつつ も、その来たるべき瞬間をどれだけ(鳥肌を立たせ ながら)待ち望んだ事かわからない。AUTO-MODが当時開 催していたシリーズ・ギグ【時の葬列】をリアル・ タイムで体験出来ず、初期のDOLLや宝島、FOOL’S MATE といった雑誌のバック・ナンバーを古本屋で読み 漁っては追体験する(した気になる)しかない身から すれば、あの当時の(未知の)興奮を体感出来るチャ ンスが来るというのだから震えて当然でもはや 【FREAKS OF THE LEGEND vol.2】の開催を待っていた期間 は、海外の大型フェスを待ち望む気分とまったく同 じだった。

そして迎えた当日、満員御礼となった会場には、恐 らく当時を知るであろう古くからのファンはもちろ ん、ボク同様の後追い世代や若いパンクスらまで、 大勢が日本各地から集まった。光栄ながらDJとして その場に参戦することが出来たボクは、その興奮の 一夜の模様を間近で見ながら「これがこの瞬間だけ で終わってしまうのはもったいない!是非とも映像 でも見たいものだ!」とシミジミ思ったものだ。そ れはボクだけでなく、その場に集った誰もが思った ことであろう。それからほどなくして、未だ興奮冷 めやらぬまま耳に入ってきたのは、今度は【FREAKS OF THE LEGEND vol.3】開催予定の話だった。【FREAKS OF THE LEGEND vol.2】からおよそ半年後の2009年1月17日、場所 は同じく新宿のMARZにて、しかもそこではDVD用の撮 影が予定され、顔ぶれもAUTO-MOD、LOOPUS、MOSQUITO SPIRAL、そしてMadame Edwardaの4バンドが揃っての再共 演!だという。そして撮影されたものが、いま皆さ んが手にしているこのDVDというワケだ。
 
 さて、そうしてボクはここにライナーノーツを頼 まれた次第なのだが、もはやボクが何かを解説する とかヒジョ〜におこがましい気すらするのである (笑)。とにかく映像を見ていただければ分かる通 り、何がスゴイって、GENET、CHU-YA、BAKI、Zinという4 大カリスマ全員が、それぞれインディヴィデュアル で異端なオリジナリティーを持っていて、ステージ や会場の空気すら、各バンドを率いた登場からの一 瞬でアッという間に塗り替えてしまうところだ。パ ントマイムに始まり、高貴で神聖な、異次元を思わ せる幻想的空間を(ときには指先ひとつで)生み出し て魅了するZin率いるMadame Edwarda(泣きの名 曲“Lorelei”に加え、まさかの新曲“Edwarda”がまた 素晴らしい!)。これぞパンク・ロック!という熱 いエネルギーと瞬発力を持つサウンドと、胸ぐを 掴まれるかのようにグッと来る歌メロを持つヴォー カルで、出だしから会場の熱を一気に大爆発させる BAKI率いるMOSQUITO SPIRAL(“Love In Vein”に顕著なメロ ディアスでハードなパンク・ロックが最高!)。日 本の、というよりも東洋のゴシック・パンク/ポジ ティヴ・パンクの始祖としての独自の世界観に、近 年はヘヴィー・サウンドの要素も融合させ、異色の 耽美的要素と破壊的重爆要素の両極面を併せ持つ唯 一無二のステージで会場を飲み込むGENET率いるAUTO-MOD (静寂から一気に世界に引き込む、アルバム『レク イエム』当時は未発表ながらライヴ盤『セレモ ニー』で陽の目を見た“Messina”からの幕開けと、 名曲“Requiem”の現代版アレンジは必聴必見!)。そ して、圧倒的な歌唱力と繊細な表現力で孤高のカリ スマぶりを発揮し、静と動を巧みに使い分けて観る 者/聴く者すべてを虜にするCHU-YA率いるLOOPUS (“Biorising”で沸かせた後のALLERGY時代の名曲“El Dorado”のアカペラに感涙!)。と、各バンドの個性 と印象深かったハイライトを簡単にピックアップし てみたが、こうして振り返っただけでも、どのシン ガー/バンドも80年代当初から変わらぬ、いや、より 一層チカラの増したエネルギーと衝動、さらにはク ウォリティーの高さを持ち続けているところに、驚 きと感動を覚えずにはいられない。CHU-YAのインタ ビューでも聞ける通り、ここに集まった4人のシン ガー率いる4バンドは、決して昔の名前でなんて出 てきていない。パンク誕生の中を生き抜いて来たオ リジネイターのチカラ、そしてそれを現在まで継続 してきたクリエィティヴなチカラ、さらには数々の ステージやその他活動を経て築き上げられて積み上 げられてきたパフォーマンスのチカラ・・・。この 4人、4バンドから感じられる<チカ)>とは、「継 続」されていることで説得力を増している<チカラ >であり、それは命ある限りの<永遠のパンク・ ロッカー>としての不屈の魂の結晶だともいえるだ ろう。そしてそれは、当時を知らない者たちにとっ ては目からウロコの<新しさ>すら感じさせるシロ モノだ。おっと、残念ながら本DVDには収録されてい ないのだが、ライヴの終焉時には、4人のシンガー 全員がステージに上がり、LOOPUSのメンバーにAUTO-MOD のギタリストYUKINOを加えた5人をバックに、セッ ションでTHE STOOGESの永久不滅のパンク・ロック・ナ ンバー、“I Wanna Be Your Dog”を披露したことも付け 加えておく。

このDVDがリリースされている頃には、ちょうど盛況 に終わって余韻を楽しんでいる頃だと思うが、これ を書いている時点では、次の【FREAKS OF THE LEGEND vol. 4】の開催が既に2009年9月5日に予定されている。出 演は、主催のGENET率いるAUTO-MODに、3度連続出演となる LOOPUS、そして元祖キャバレー・ニューウェイヴ・パ ンクの異名を取るIssay率いるDER ZIBET(オリジナル・メ ンバーでの復活!)の3バンドなので、これまたヒ ジョ〜に楽しみで仕方ナイ。また、同じく現時点で 分かっている限りの情報を書くと、Madame Edwardaは新 作アルバムのレコーディングに入っており、MOSQUITO SPIRALも3作目のアルバム・レコーディングを開始し ているという。ここに集まった<伝説の異形者>た ちは、それぞれが独自の理想を求めて走り続け、空 想を形にすべくチャレンジし続け、今日も何処かで 新たな伝説を生み、ロックやパンクの幻想を抱き夢 見る多くのファンを魅了し続けている事だろう。 GENETいわく「面白いことをやりたいだけの話だから さ」ということだが、ならばこれからも面白い事が 続く限り、【FREAKS OF THE LEGEND】が開催され続ける限 り、皆でついて行こうじゃないか!

ヤマダナオヒロa.k.a. nAo12xu/†13th MOON†(2009年7月某日)
⇒Francois